「スペイン歌曲って、何ですか?」
過日の私の第19回リサイタルご案内に嬉しいコメントをいただきました。ホッとして、リサイタル恒例の悩みを書かせていただきたくなりました。恒例かつ最大の悩み、それはスペイン語!です。リサイタルのお客様の大半はスペイン語をご存じありません。言葉の壁にいつもご不満が出ます。下記は、拙ブログ(7月24日付)の転載です。Blog de Iberoamigosでお読みいただくのは申し訳ないような内容ですが…。
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いつもコンサートに足を運んでくださる方からお便りをいただいた。「リサイタルを楽しみにしています。ところで今さらですが、スペイン歌曲というのは何ですか?スペインの曲をスペイン語で歌うことですか?外国の曲をスペイン語で歌うことですか?カルメンもスペイン歌曲ですか?」とある。「とんだ音楽音痴でごめんなさい」と私を気遣ってくださってもいる。なるほど…。これが大半のお客様の本音だろう。親しく応援してくださる気持ちから、勇気をもって書いてくださったのだ。
スペイン歌曲とは、スペインの作曲家による声楽作品の総称である。日本とは事情が異なり、各地の民謡を編曲した作品も多い。スペインの伝統的なオペレッタであるサルスエラや、オペラもある。スペイン語圏という広い世界に目を向ければ、中南米の作曲家の作品も私のレパートリーに含まれる。ちなみにフランスの作曲家ビゼーが作曲したオペラ「カルメン」はスペイン歌曲ではない。
スペイン歌曲をスペイン語で歌う。言葉の壁は承知している。それでも原語で歌う。「歌」とは、詞、旋律、リズムが一体になったものと考えるからだ。歌詞をすげかえれば、それは別の作品になってしまう。たったひとつの言葉でも、それをどの音にどんなリズムで乗せるか、作曲家が込めた思いを大切にしたい。もちろん言語の構造から来る訳詞の難しさもある。スペイン語では一つの音符にのせられる言葉が、日本語では三倍くらい?の長さになる。オリジナルの内容をすべて表そうとすれば、どの曲も7番も8番もある歌になってしまう。素晴らしく魅力的な訳で広く人々に知られている曲があるが、これはもう訳詞ではなく「作詞」である。言葉の都合で原詞とかけ離れた内容になっていれば、これは別の作品だ。
意味の分からない歌を延々と聞かされるのは間違いなく苦痛である。コンサートでは、スペイン語での演奏にできるだけ寄り添っていただけるよう努める。「歌詞大意」をお渡しし、演奏の合間にはオシャベリで曲の内容、エピソードをご紹介をする。気に入れば拍手をしていただき、笑いたければ遠慮なく笑っていただく。コンサートを忍耐の時間にしたくない。また、してはいけないと思う。「スペイン語が分からないから…」その言葉を思わず忘れて、心から楽しんでいただきたいのだ。
最後はありったけの想いをこめて、歌う。音楽の力を信じて、歌う。それでも、ご不満は出る。でも本当に、それしかできない。
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お客様のお気持ちもよく分かるのです。しかし一方で、どれほど尽くしても、ただただ「言葉が、言葉が、、、」と言い続ける方々を前に、自分が女ドン・キホーテのように感じられることがあります。私は、どこへ向って、何に向って歌っているの?
でも、それでも、歌おう、と思うのです。スペインの歌が本当に大好きなのです。
バルセロナを中心とするカタルーニャ地方では、カタラン語が実質上第一言語となっています。私の解釈では、スペイン語(いわゆるカステジャーノ)と併記しなければいけないと思っているのですが、実際は、市役所の手紙などはカタラン語のみで書かれています。カタルーニャ州政府から援助を受けている学校(公立も私立も)はカタラン語で授業をしなければいけないそうです。大学も、先生がどちらの言葉を話すかによって、カタラン語orスペイン語の授業になるかが決まります。その先生を採用する場合も、カタラン語のレベルが一つの判断基準になるようです。