聞く人を感動させる通訳とは
今年は日本とメキシコの友好400周年にあたり、年間を通じて様々な記念行事が開催されています。
その一環として、メキシコの帆船「クアウテモック号」が大阪、横浜に寄港後、400年前にメキシコ人と日本人の最初の交流の現場となった千葉県御宿沖にやってきました。
当時、航海中に難破し、千葉県沖で座礁していたヌエバエスパーニャの船、サンフランシスコ号の乗組員300名以上を、御宿の地元住民たちが救助、保護し、最終的には徳川家康公の計らいもあって新しい帆船をもらって無事帰還したことが当時スペインの属領であったメキシコと日本の修好の契機となったそうです。
御宿の丘の上にある日西墨三国交通発祥記念碑で黙祷を捧げるイベント終了後、なんとそこに、思いがけないお方の姿を発見!
塾でもっともお世話になった(あ、塾長の次でした!)サンチェス先生でした。なんと、昨年御宿に自宅を移されたことをきっかけにたまたま地元のイベントのお手伝いをされていたとのこと。
夕方に開かれたレセプションではサンチェス先生、日本側の重要人物の方々のスピーチ、メッセージの通訳を務められていました。
そのスペイン語の訳文の素晴らしかったこと!
大使館勤務で日本語もできるメキシコ人女性の一人が真剣にメモをとっているので、「何を書いてるの?」と聞いたら、実はサンチェス先生の表現が素晴らしかったので書き留めていたのだとか。さらに、私がサンチェス先生と立ち話をしていると上司が寄ってきて「あなたの通訳には感動した」と先生に話しかけていました。
先生は、事前に原稿を受け取られたとき、特に中でも一つのスピーチに感銘を受け、これには相応のスペイン語を使って表現するべきと考えられたそうです。
例として一文だけ挙げると、
(当時のエピソードに記された人類愛を我々は後世に伝える義務がある、という発言の後)「現代の国際社会においても人の命ほど尊いものはなく、人間は常に平等でなければなりません。」
という原稿を
Las enseñanzas que nos quedan de este episodio son: el valor supremo de la vida humana en cualquier situación y la igualdad absoluta entre seres humanos, sean de donde sean, dos cosas verdaderamente sagradas.
と表現されておりました。どうです?!
このような訳し方は熟練したごく一部の人にしかできないし、また許されないことなのかもしれませんが、すぐれた通訳、翻訳により原語により伝えられるスピーチの真意が言葉の重みを伴って別の言語においても伝えられるのだということを思い知る経験となりました。